自分の仕事に誇りを持つ #19
2019/04/25(木) 横浜スタジアム
ベイスターズ 3-5 タイガース
勝 ジョンソン
負 山﨑
S ドリス
最後の最後に、悪夢が待っていた。
嫌な予感はしていた。
神宮球場で、スワローズ青木宣親、山田哲人、ウラディミール・バレンティンがジャイアンツ菅野智之から3者連続ホームラン。
スワローズの3連発といえば、あの試合を思い出させた。
2004年8月8日。
横浜スタジアム。
マウンドには、「ハマの大魔神」佐々木主浩。
このシーズン開幕直前に、シアトル・マリナーズから復帰していた。
「ああぁ、またも、またも、入ってしまうのか」
TVK吉井祥博アナウンサーの悲鳴にも似た実況が悲しみを増幅する。
土橋勝征、岩村明憲、古田敦也に3連続ホームラン。
佐々木はファームに降格。
翌年に引退することとなる。
「佐々木さんは登板間隔が空いていた。佐々木さんが登板出来る機会を作れなかった僕らにも責任がある」
チームメイトの佐伯貴弘は、試合後悔しさをにじませて語った。
この日も、そんな試合だった。
エース今永昇太は、7回114球。
被安打7、奪三振5、失点2の熱投。
7回裏、伊藤光のホームランで勝ち越しに成功。
8回表、エドウィン・エスコバーのパーフェクトリリーフ。
9回表、Zombie Nationの「Kernkraft400」の大音響が鳴り響く。
奇しくも、マリナーズ時代の佐々木の入場曲だ。
「ヤスアキジャンプ」に、ハマスタは興奮の坩堝となる。
1992年10月2日生まれ。
東京都荒川区出身の26歳。
人情味溢れる庶民の町で彼は育った。
小学校3年生時に両親が離婚。
姉と共に母と暮らす事を選んだ。
だが週末になれば、少年野球のコーチだった父に会えた。大好きな父とともに野球に没頭した少年時代だった。
「子供の頃、母と一緒にゆっくりご飯を食べた記憶はないですね」
朝から夜中まで不眠不休で働き、2人の子供を育てる母の背中に、少年は誓う。
「プロ野球選手になって、お母さんに恩返しする」
甲子園の常連、名門・帝京高校に進学。
2年生の時、強豪校の厳しい練習に、日々の学業との両立の壁にぶつかった彼は、母に告げる。
「お母さん、僕、野球辞める」
「何を言っているの! 自分で蒔いた種でしょ。自分で拾いなさい!」
どんなに辛くても涙一つ見せたことなどなかった母が、はじめて彼の前で泣いた。
タクシーに乗せこまれ、帝京高校へ。
校門には、監督とチームメイトが待ってくれていた。
「僕には、家族と野球しかない」
彼の腹が決まった。
甲子園に2度出場するも、ドラフト指名はならなかった。
「4年後に必ずドラフト1位でプロに行く」
更に強い決意で亜細亜大学に進学。
チームのエースとなり、大学日本代表にも選ばれる活躍が評価され、2014年ドラフト1位でベイスターズに入団する。
開幕直前のファンミーティング。
「康晃、ストッパーやるか?!」
「はい、やります!」
当時ストッパー不在だったチーム。
中畑清監督の思いつきの大博打に見えた決断にも、裏付けがあった。
チームは彼を、大学時代から「ストッパー候補」としてマークして調査していたのだ。
「小さな大魔神になります!」
デビュー戦のヒーローインタビューで彼は満面の笑みで叫ぶ。
58試合、防御率1.92、2勝4敗37セーブ。
2000年の金城龍彦以来、チームとして15年振りの新人王に輝く。
ハマスタには、母と姉のために彼が用意した専用の席がある。
ファンに声をかけられれば、笑顔で応えるのは、親子共々。
「その人の思い出に残るように5秒間念じてサインをしています」
スタッフに止められるまで、彼のファンサービスは続く。
昨シーズンは初のセーブ王を獲得。
「大事な試合をいくつか落としてしまった。タイトルをとっても優勝しなければ意味がない」
回跨ぎが苦手。
同点では力を発揮できない。
夏場にスタミナ切れする。
そして、本拠地横浜スタジアムでの防御率が悪い。
多くの課題を抱えながらも、デビューした年から5年連続でストッパーを務めてきた。
プロ野球史上、こんな選手はかつて存在しなかった。
誰もがなしえなかった道を、彼は切り開いている。
セーブシチュエーションでの登板は、11日振り。
「その影響はない。実力だと思う」と彼は言い切った。
今日はやられた。
だが、プロにはやり返すチャンスがある。
罵声を、歓声に。
溜息を、雄叫びに。
失望を、歓喜に。
Kill or be killed.
やられたら、やり返せ!
「我らが心の終身名誉監督」権藤博の言葉だ。
君はこのまま終わる男ではない。
不死鳥の如く這い上がれ!
たたかうぞ
闘志みなぎらせて
勝利の海
行くぞベイスターズ
横浜DeNAベイスターズ。
背番号19。
山﨑康晃。
TAKE PRIDE IN YOUR WORK.
自分の仕事に誇りを持つ。
Go Beyond the Limit.
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